室賀の説得の場に同席することを許可されなかった信繁をきりは慰めようとしていた。父高梨内記が娘に促したのだった。きりは、信繁とともに饅頭を食べようとしていたのだが、信繁はきりには気をとめず、その場を立去ってしまうのだった。
きりを振る信繁向かった先は?
信繁が向かったのは、堀田作兵衛の家だ。そこで信繁が見たのは、返り血を浴び、槍を右手に、収穫物で満たされた籠を左手に抱えた作兵衛だった。再度となり村から襲撃をうけ、作兵衛たち、村の若者達が総出で撃退したのだった。戦闘後、疲れた表情で作兵衛は言った。「もし昌幸が信濃を治めてくれれば、こんなふうに揉め事であたふたしなくても済むのではないか」
人の気配を感じた梅は、棍棒を手に家から出てきた。信繁の姿をみた梅は、急ぎ棍棒を捨てると、信繁を家の中に招いたのだった。
そして、信繁に対し自分の思いを漏らすのだった。
梅 春日様には申し訳ないことですが、私はほっとしています。だって、戦をしなくて済んだから。
梅は、戦が続き、畑が荒れて食料を奪い合うことになるので、戦を避けられるなら避けるに越したことはないと話し、続けた。
梅 源次郎様には死んで欲しくないのです。大切な人を戦に送り出すのは、辛いことなんですよ。最後の別れになるかもしれないのですから。
そう言った梅は、単純に相手に勝つことが善ではなく、いかに人の命を損なわないようにするか、それが大切なのではないか、そして昌幸はそれがわかっているのではないかと言う。
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自分の目的のためには、他人を利用し、ときに殺すことも厭わない昌幸に対し、わだかまりのあった信繁も、梅の言葉を聞いて、そのわだかまりを解消するとともに、わだかまりを解消してくれた梅自身が、自分にとってかけがえのない存在だと確信し、その思いを梅に伝えたのだった。
その夜、自分の居室に戻った信繁は、饅頭が壁にたたきつけられているのを発見したのだった。
徳川と北条の狭間で
甲斐では、徳川家康と北条氏直が対峙していたが、膠着状態が続いていた。昌幸は、氏直から出陣を要請されたが、上杉勢への備えをしているふりを伝えたのだった。その間に小県の国衆を招集し、協力を呼びかける。しかし、国衆の面々は、大名の様子見をするばかりで、昌幸への協力を申し出るものは皆無だった。
そんな折、国衆たちを説得する室賀の姿があった。これまで室賀と昌幸は幾度と無く反発し、犬猿の仲だった。しかし、上杉家、北条家にこの信濃をとられるより昌幸とともに国衆で治めた方が良いと考えての事だった。軍議が解散し、自領に帰ろうとした室賀は、信繁に会うと、自らひとりで立つこともできたのに、昌幸が犬猿の仲の自分にわざわざ声をかけたことを褒めそやした。
信繁の驚き
その後、自室に戻った信繁を待っていたのは、きりだった。信繁に振られたきりだったが、改めて饅頭を持参し、信繁を慰めようとしたのだった。しかし、昨晩梅の言葉で立ち直ったことを知ったきりは、父に言われて信繁のもとに来ただけだと強がるのだった。きりの本当の気持ちに鈍感な信繁が放つ言葉は、饅頭をして再び壁に張り付かしめるのだった。
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